*** コメント入力欄が文章の最後にあります。ぜひご感想を! ***
⏰土曜日 2025.08.16 12:20 · 12mins
世界の二大超大国の首脳がじかに会って、少人数で会談する、あるいは会談したというニュースが世界を駆け巡っていますが、私を含めて、この会談が真に実りのある外交交渉であったと考える人はきっと少なくないことだと思います。ロシアがウクライナに一方的に侵攻した。その事件が起こるちょっと前に、クリミア半島を一方的に併合するという大事件が起き、国際世論はそのときには沈黙を守っていたのですが、その後に本格的な軍事侵攻がなされ、今報道されている通り、実に理不尽な戦争、人殺し、破壊が毎日なされているわけですね。
そして、それをやっている張本人の1人が、戦争やめて、平和を求めてるというようなことを言うときに、その背景に何があるのか、というのを考えるのは、ちょっとでも物を考える人であれば、当たり前のことであるわけですが、今、国際報道に携わっているジャーナリストは、そのような関心はないかのごとく、おめでたく首脳会談の成果をその当事者が語るように語って、歓迎しています。
しかしながら、ロシアにしてみれば、ウクライナ侵攻というのは、「ウクライナが急速に、ロシアから見れば、ナチス化する。西側諸国の側に入っていく」ということに対する自国の安全保障上の懸念で、それが最も大きな問題であり、ウクライナのNATO加盟っていうのを何としても阻止したかった。ウクライナにしてみれば、もうロシアの属国ではない。社会主義連邦共和国っていう、ソ連時代の枠組みから抜けて、西側諸国の一つとして発展を遂げたい。そういう願いを持っているわけですね。
ウクライナの前大統領が倒れたのも、NATOに対して加盟しないという方針に国民がノーを突きつけたからであります。一方、ロシアの側から見れば、NATOが自国の境界に一歩一歩迫ってくる。今では、ロシアの政策の失敗と言っていいと思いますが、バルト三国を含め、近隣の国々が全てNATOに加盟するというような事態になり、ウクライナはむしろ象徴的な存在として、NATOとロシアとの間の緩衝地域として残るというくらいの意味しかなくなってきてるわけですが、NATOの歴史を考えてみると、プーチンの「ウクライナのNATO加盟は絶対に認められない」という主張も、幾分は理解できないこともないわけであります。
実際、NATO側はロシアに対して、「ロシアとNATOとの国境を一歩たりとも変更しない」ということを約束していたわけでありまして、その後のNATOの加盟国の急速な拡大は、ロシアにとって、全く約束をほごにする政策と映ったに違いありません。しかし、それはNATOが覇権主義的な動きというよりは、ロシアという国に対する周辺諸国の不信感、あるいはもっと大げさに言えば危機感の表れであり、NATOに新しく加盟した諸国が、反ロシアを明確にするに至ったという、政治的な経緯あるいは経済的・文化的な雰囲気の変化というものに対して、ロシアは十分理解しなければならないところであるわけですが、国際政治の専門家の世界では、NATOが悪い、NATOの覇権主義的な拡大がロシアを追い詰めたんだという見方が一般的のようです。
しかし、さはさりながら、NATOに加盟しようとした国々の国民の心情、一言で言えば、それがロシアに対する警戒心の深まり、あるいはロシアに対する不信感の拡大、そういうものであったということは、ごく自然なことであり、これについて周辺諸国が責任を持つべきものというよりは、むしろロシア自身の国内体制の問題を指摘しなければいけないと思います。
私達日本人が、ヨーロッパの問題に対して、いちいち口を出すのはおかしい。それだけの責任を持つことができないのであるから、という議論もありますけれども、私達はこの新しい東西冷戦という世界の新秩序の前に、オロオロしているだけではならない。その世界の新秩序の中で、リアリスティックに次の世界を見据えて、行動していかなければならないと思うのです。
我が国のジャーナリズムの中には、そのような冷徹な眼差しを持って外交問題を考えるという人があまりいないようです。そして、ドナルド・トランプが、ウクライナとロシアとの戦争を終結させるという手柄によって、自分の存在理由を世界に示す。こういうような私から見れば馬鹿げたことに対して、世界がものすごく大きな関心を持って、見守っているっていう状況は、まさにドナルド・トランプの、願ったり叶ったりということだと思います。そういう茶番劇の舞台裏を準備するという役割を果たしているということに対して、私は悲しみと憤りを感じるのですが、私の見方はいささか偏っているでしょうか。
ウクライナに対するロシアの軍事作戦が終了することを1日も早いことを願っておりますが、それは何よりもロシア側の停戦であるべきである。攻めてきているのは一方的にロシアなのですから、と私は考えるのですけれど、その当たり前の常識が通用しない現在の世界情勢に対して、やはり憤りと悲しみを感じざるを得ません。


コメント