長岡亮介のよもやま話444「関税と自国産業保護の難しい綱渡り」

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最近、関税のことがよくジャーナリズムの話題となっています。関税というのは、他国より自国に対して、自国の産業の競争力よりも遥かに強いもの、一言で言えば、ものすごく安いものがどんどん流入するということになってしまうと、自国の産業が破壊されてしまうわけでありますね。そこで税金をかけることによって、他国の商品を相対的に高くする。これが関税の基本だと私は理解しているのですが、かつてインドでも、英国製の安い綿花、綿花自身はアメリカを含めいろいろなところで取れるわけですが、それを紡績工場で加工してすごく安い綿の布として輸出する。これはかつては大英帝国の、つまり昔のイギリスの主要産業であったわけです。そういう主要産業で作られたものが流入してくるとなると、機織り産業というのを手工業でやっていた国においては、そういう伝統的な産業が全部破壊されて、外国製品に全部なってしまう。

これに対して、例えば関税、お金をかけることによって、それを阻止する。あるいは抑止するということがあります。かつてインディラガンディーは、そのような税金で守るのではなくて、自国民の人々の生き方として、手織りの布を作る。そういう文化的な抵抗運動によって、イギリス製品に対して自国の産業を防衛しようとした有名な話がありますが、なかなかそのような人間の活動だけでは抑止することができないので、実際に関税というお金をかけることによって、他国の商品が相対的に高くなる。そうなれば自国で買う人は少なくなるであろう。こういう経済政策がしばしば取られているわけです。

アメリカのトランプ大統領が問題としているのは、アメリカからの商品に対して、高い関税をかけておきながら、自国の商品はアメリカに対して関税なしでどんどん輸入してくる。あるいは輸出してくる。これがけしからんという、いかにも短絡的な発想でありますと、私は思うのですけれども、そこで他国からの輸入品に対して、関税を高くする。特にいろいろなことで、関税障壁が大きい日本に対してはここぞとばかり税金を高くかけるという政策をとっているわけです。

日本は阿呆らしいことに日米の揺るぎなき安定的なパートナーシップ協定でこういうものに頼って、そんな冷たいことは他の国と違って日本に対してはしないでくれってということを懇願するような外交政策を展開しているわけでありますが、アメリカのトランプが怒っているのは、日本の輸入製品、とりわけアメリカからの輸入品、アメリカ側の輸出品って言った方がいいでしょうか、例えば畜産、牛肉であるとか豚肉であるとか、あるいは農作物であるわけですね。

日本はご存知の通り、コメに対しては、日本の何とか自給率100%を維持することができる唯一の農作物であるということをもって、コメに対しては非常に高い関税をかけている。これがけしからんと、トランプは言うわけです。確かに、コメだけ輸入しないという日本の農業政策のあり方はちょっと異常なわけで、私達の日常的に食べているいろいろなものがほとんど全て輸入に頼っている。95%くらい輸入している。大豆にしろ、トウモロコシにしろ、あるいは小麦にしろ、そういう状況であるわけで、「コメだけを守ってどうするんだ。食料安全保障の要だ」と張り切る人がいるんですが、私達はもう食料安全保障についてはほとんど無策の状態を何十年も続けてきているわけですね。

今、コメがいろいろと話題になっておりますが、コメを守るということは、単に米作農家を守るというだけではなくて日本の緑の豊かな田園風景を守る、そういういろんな意味があるということを承知の上で言うんですけれども、日本のコメの関税率は、アメリカから見れば信じられないほど高いわけです。私達は、高いおコメを食べているというんですけれども、それはごく最近の話ではなくて、実は税金のことを考えると、ほとんど他国の10倍くらいの値段でコメを買って食べているわけですね。

こういう異常な関税の状態に対し、それをそのままほったらかしておいて、他国に対してはどうだというのがけしからんというのが、トランプ政権の言いたいことなんだと思いますけど、日本には日本の事情があり、特に日本の自民党・公明党などには農村票に対する政治的な依存度がかなり高いものがありますから、どうしても農業政策に関しては、保守的にならざるを得ないっていう面もあるようにも聞きます。もっと典型的なのは砂糖ですね。日本の砂糖は国際的な砂糖の価格の10倍くらいの値段になっている。あるいはもっとかもしれません。これは沖縄の砂糖産業を守るという国の政策から出てきているわけで、これは単に食料安全保障というよりは、沖縄の農業を守るという日本の第二次世界大戦から続いてきている沖縄政策に対する負の資産の継続的な負債の返済のようなものと言っていいかと思いますが、そういうふうに関税というのは自国の産業を守るために、高い関税をかけ、でも自国民はそれを買わないように誘導するという政策なわけですね。

このような政策をとったときに、自国の国民が喜ぶか。アメリカでは一部喜んでいるような報道がなされておりますけれども、実は関税が高くなったときに、高い商品を購入するのは国民であるわけで、良いものであればどんなに高い関税がかかっていても、かつての日本のように舶来品など言ってそれを珍重し、もてはやされていたわけです。

そういうことを考えれば、関税が高くなったから物が売れなくなるということには必ずしもならない。しかし、関税が輸入障壁であることは確かでありますね。そういうときに、アメリカと交渉する。トランプなんかはあんまり品のいい言葉ではないと思いますが、ディール、取引だと、商売の取引ですね、そういう商売の取引に国際的な経済の政策が左右されて良いのかとそういう問題もそもそもあると思いますが、そういう政治の品格など問題にすることのない国においては、このような表現が一般化し、日本でもそのような表現に対応するかのような政策をやっていれば何とかなるっていうふうに思っています。

しかしながら、もしディールであるとするならば、こちらから妥協の政策を持っていかない限り、ディールは成立するはずがない、ということは小学生でもわかることなのに、日本では政治家も、あるいは国民をリードする立場にあるジャーナリズムの人たちも、あまりよく理解してないのではないかとちょっと心配になって、私としてはあんまり時事問題に触れるというのは好まないのですけれども、あえて最近の関税問題についてお話いたしました。

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