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数学における理解と、数学の暗記とはどう違うか。これは少しでも数学が進んでくると明らかなことだと、皆さん理解していただけると思うんですが、初等的なレベルだと、数学がわかるということと、暗記するということと変わらないじゃないか、と思ってしまいがちな場面も多いかと思い、今回はあえてそういう場面を考えて、話題として取り上げたいと思います。
平面上の多角形、普通は凸多角形と言いますね、三角形とか四角形、五角形、六角形、皆さんが普通に書く多角形は凸多角形というものです。多角形の中でn角形となった場合は、凸n角形っていうふうに言うわけです。さて、三角形の三つの内角を全部足したもの、難しい言葉では「内角の総和」と言いますが、それがちょうど180度である。このことは驚くべき定理で、本当に感動に値するものだと思うのですが、この「三角形の内角の和が180度である」という事実から出発すると、三角形に限らず、四角形であろうとも、五角形であろうとも、六角形だろうとも、どんな多角形であっても、内角の総和は簡単に求めることができる。すなわち、四角形の場合で言えば、四角形を対角線で2つの三角形に分割してやると考えると、四角形の内角の総和というのが2つの三角形の内角の総和、つまり180度2個分ということで、360度になる。五角形だと、三角形3つ分、五角形で対角線2本引いて五角形を3つの三角形に分けてやればいいわけですね。従って五角形は三角形3つ分、計算すると540度ということになるでしょうか。六角形であるならば、三角形4個分ということになるわけです。
小学校では一般に文字というのは使わないかもしれませんが、中学以上になると文字を便利に使えますね。n角形という概念を考えるわけです。五角形、六角形、七角形、八角形と、いちいち具体的な多角形について言わずに、「一般にn角形においては」と、こう考えるわけですね。n角形というのは、頂角がn個ある、頂点がn個ある多角形であると思ってもらっていい。そのn角形の内角の総和、内角を全部足したものはいくつになるか。それは今まで考えてきたのと全く同じで、n角形に対角線を一つの頂点から他の頂点に向かって引いてやる。n-3 本の対角線が引けて、その n-3 本の対角線によってn角形が n-2 個の三角形に分割できる。その n-2 というのは四角形だったならば、2つの三角形、五角形だったらば3つの三角形、六角形だったら4つの三角形、そういうふうになった規則が一般化されているだけですから、「n角形になったならば n-2 個の三角形の内角の和に分割できる」ということは、ちょっと考えればわかることですね。
したがって、n角形の内角の総和を求める公式を出せと言われたらば、n-2 の三角形の個数、三角形一つで180度ですから n-2×180度、そういうふうにして計算ができるというわけです。これを一生懸命暗記しようとすると n-2 にするんだっけ、n+2 にするんだっけ、n-1 にするんだっけ、訳わかんなくなるわけですね。でもn-2になるということは、n角形の内角の和を三角形の内角の和に帰着させて考えることができるという、一番基本的な考え方、「四角形は三角形2つに、五角形は三角形3つに、六角形は三角形4つに分割することができる」ということがわかっていれば、n角形だったらば、n-2 個の三角形の和に分割できるというだけの話。後は基本的な事実として三角形の内角の和が180度である。これがわかっていればいい。
というわけで、n角形の内角の和の公式として、よく中学校の教科書なんかに太字で強調して書かれているわけですが、(n-2)×180度、こんな公式を覚える必要は全くないと言っていいわけですね。全くないと言っていいくらいこの公式の意味がわかれば、公式の結果は明らかであるということです。さらに数学的に難しいことを言うと、今n角形の内角の総和を考えましたけれども、実はn角形において内角の総和を求めようとすると、先ほど紹介したような (n-2)×180度、こんな複雑な式が出てくる。言っている内容は簡単なのに、式で書くと複雑なる。数学を丸暗記しようとする人は、しばしばこの複雑な結果を覚えようとしているんですね。でも数学が得意な人はそんなことは覚えない。そんなことを覚えずに、n角形であれば、n-2 個分の三角形の内角の和、こういうふうに理解するから、式を暗記する労力も遥かに少ないわけです。
しかも重要なことは、今「内角の和」で考えましたけれども、内角ではなくて一つ一つの頂角について「外角」というのを考えることにしようと思います。外角というのは最初のうちは難しいそうに見えるんですけど、内角よりも考えるのはずっと素直なものでありまして、n角形の外角の和は、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、そういう全ての凸多角形の外角の総和と同じく、常に360度なんですね。そういう意味では、内角のあの公式を覚えるくらいだったら、外角のあの公式を覚える方がよほど良い。なぜならば覚える手間がないからということです。
簡単な多角形の内角の和、あるいは外角の和というテーマでお話しましたけれども、公式を覚えるということと、理解するということの大きな違いに、皆さんの目が見開かれたことを期待しています。こういう簡単なことで、数学は暗記するのではなくて、実は理解するということをしっかりと頭で体験することだと。もし、大げさな言葉を使って言うことが許されるならば、数学において大切なのは「理解の発見」であって、理解を暗記することではないということです。
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