長岡亮介のよもやま話414「英仏の国政選挙と日本の都知事選の相違について、国民の民主主義についての基礎教養の有無を思います」

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 政治の問題というのは、ときにデリケートでありますので、私はこの欄であまり取り上げてきませんでしたが、いろいろな国で選挙の劇的な結果が出て、そうとは限らない、むしろ十年一日のような日本の政治状況と比較して、「本当に日本が政治的に成熟した国民になることが重要である」という思いを、皆さんと共有したいと思い、改めて政治の話をあえて取り上げたいと思います。

 私が驚いたのは、イギリス・フランスという、いわば近代民主主義の生みの親と言ってよい国において、国政選挙において劇的な結果が出たということです。イギリスの方は、本当に久しぶりに労働党政権が圧勝した。労働党政権が圧勝する。イギリスでは、保守党が政権を握っているとき、労働党はShadow Cabinet・影の内閣というのを作っていて、言ってみれば行政の交代に対して、行政政策というのが首尾一貫するように、そういう体制を常に取っているわけであります。日本では、保守党が政権を失い、革新側が政権を取った途端に大混乱に陥るというへまをやりました。要するにShadow Cabinetとしての責任感と普段からの心がけが全く違うということが明らかになったわけです。イギリスではそのような激変にも関わらず、従ってEUとの関係の見直しという作業が始まっているにもかかわらず、外交政策に関して劇的な変化というのが起きないようにして、しかし新しい風を吹かそうと、労働党が指導しだしたというニュースが入っています。

 フランスでは、驚いたことにマクロン大統領の突然の議会の解散によって、第1回目の選挙は、なんとフランスにおいて最も嫌われていると言って良い、しかし今や多数の支持を受けている国民連合が第1党となるという結果が出て、そしてその事態を受けて、よく日本のジャーナリズムではどんでん返しっていうふうに言われていますけど、全然そうではない、昔からフランスはそうですが、国民連合のような極右が出てきたときには、その他の政治勢力が団結して、国民連合に対抗するという運動をしてきたわけです。今回も、マクロンの中道右派というんでしょうか、と左派連合、この左派連合というのが本当に連合という名にふさわしい非常に多くの団体が大同団結したというものでありますけれども、その左翼連合とマクロンの政党が連携をとって、小議席の第1位を国民連合から奪うということに大成功して、第1回の選挙結果とはまるで反対の選挙結果を得たわけです。

 総選挙という大事な選挙がひしひしと近づいているにもかかわらず、都議会の選挙でそういうような大同団結をするということが、与党自民党、公明党を除いてはできなかった。日本と比べると、本当に大事な選挙において、大同団結するということの意味を、理解しているとは思えない日本の野党勢力。本当に子供じみた議論の応酬に明け暮れている日本の野党連合に、私はいささかがっかりします。こんなにも長い間、野党の悲哀を浴びているにも関わらず、その野党の悲哀を総括することができないでいる。1回大失敗をしているということがありますけれども、その大失敗をしているからこそ私達は真剣にそれを総括して乗り越えなければならない。そういう局面にあるのですが、日本はこれだけ与党が腐敗していても、その与党の腐敗を乗り越えるための野党連合を構築することができないでいるということに、私は非常な絶望と焦りを感じています。そして、そのような未来しか若者に残せていない私達の世代の責任を痛感しているわけです。

 残された人生の幾ばくかでも、このような馬鹿げた日本の政治状況を好転するように、何とか使っていきたいと思っていますが、なかなか難しいという思いとともに、残された人生の時間を考えて、叶わぬ望みなのかなと思ったりもして、そういう自分を情けなく感じています。私は、こと教育では、どんなに少数派であっても、必ずやがて多数派になるという希望を捨てていない。それは数学というものの普遍性を信じているからなんですが、日本人の政治意識の成熟度っていうのを考えますと、民主主義というものを全く知らない国民であるということを、何度も何度も思い知らされているので、ついつい弱気になってしまう私であります。

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