長岡亮介のよもやま話271「納税者意識の大切さ」

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 我が国では、いろいろな国際的な行事が開催されるたびに、多くの警察官が全国から動員されると、そういう情報をテレビで聞くことが多いと思いますが、そのようなときに、莫大な予算が使われているということに気づく人は少ないようですね。警察官は 1人 1 人、給料をもらって働いている国家公務員あるいは地方公務員であると思うんです。そして、そのような人たちが、自分の普段の勤務を離れて、特別のエクストラな労働、それを命じられるときに、それを断ることができないのは、自衛隊の自衛官などと同様であると思います。消防に関してもそうなんだと思うんですね。

 最近でこそ、医者、特に若手の研修医の過重労働が問題になっていますが、実は、余人をもって代えがたいというような仕事をしている人たちの中には、何らかの理由で、上からの命令で、あるいは組織の論理で、あるいは自分がいないと他の人が困るかという自発的な理由によって、過重な労働というのを強いられることがあると思います。そして、そのようなエクストラな労働に対して対価が支払われる。これも当たり前の話ですね。今のような世の中では、労働をするということは、お金が支払われるということでもって、報いられる。そういう考え方が一般的であるから、公務員であっても、人々に奉仕する、サービスするというのが基本の公務員であっても、特別の労働をしたときには、そのための手当っていうのが支払われる。それは災害で活躍する自衛官も消防隊も、同じなんだと思うんです。国のためだから、といって、無料で働けっていうことには決してならないはずで、むしろ危険地手当っていうのがあるのは普通だと思うんです。

 そうすると、要するにそのような大きな災害なり、国の大きな行事があるときに、それを実行するに際して、人件費が莫大にかかるということ。余計なことをしないとしても、最低限の警備のために、必要であると、こういうロジックがあると思うんですね。最近では要人警護ということで、日本でもワグネル、ワグネルというのは、前言いましたように、ドイツ語や日本語的に言えばワーグナーでありますが、そういう民間組織が、活躍するということもあるわけです。しかも、それが華やかな演出であるとすれば、その華やかな演出を感動的に遂行するために、広告宣伝会社、それが重要な役割を果たしたりする。そういう人たちはボランティアでやっているのでは全くありません。いわばプロフェッショナルとして、職業人としてやっている。それで稼いでいるということです。そのために莫大な国家予算が使われているということに、あるいは地方行政の予算が使われるということに、私達は目をやる必要がある。本来はできるだけそういう行政の介入の恩恵を預かることなく、いろいろな行事を最小限の費用で、実行する。そういう叡智が、必要だと思うんですね。納税者の立場であれば、「国の問題である」のように、問題を国に押し付けて、自分が素知らぬふりをするということはとんでもないことで、国の仕事を増やせば増やすほど、実は税金が使われているんだ。ということ。そのことを日本人はしばしば忘れているのではないかと思います。

 都内に住んでいると救急車の活動、あるいは活躍、それを目にすることがあるのですが、小さな子供から見れば、救急車消防車が走り回るということはすごく嬉しいことではないかと思います。しかし、普通の国民の立場から見れば、救急車や消防車が走るたびにそれは税金の対象、税金が使われる対象になっているということ。従って、本当に重い病気で緊急性を要するときに、救急車が助けてくれるということは、本当にありがたいことではあるけれど、救急車をまるで国民の権利であるかのようにタクシー代わりに使う人がいるという話を聞くと、やはり私としては、腹が立つのを禁ずることができない。国民は自分たちが納税者であるということを、ちょっと自覚していないのではないか、あるいはその自覚が足りないのではないかと思うんですね。日本は税金が大変高い国の中に仲間入りしつつあります。そのような高い税金を払うことが、結果として良い福祉、良い教育をもたらしているならばいいのですが、その高い税金がつまらない目的のために使われている、あるいは、私企業の利益を大きくすることに使われているとすれば、どうでしょうか。

 一般の報道では決して話題とならない話題をあえて取り上げてみようと思ったのは、私達はそろそろ利口になる、そういう時期を迎えている。みんなが利口にならざるを得ない、そういう時期に入りつつあるということを、いろいろと感ずることが多いからです。納税者意識を持って、自分たちがその費用を払っているんだということ。それを、忘れないようにいたしましょう。そして、私達が払っているからこそ、本当に大切なサービスを本当に大切な人に対して届ける。そういう体制をとるように行政を監視していきたい、と願っています。若い人がこういう面倒くさい話から、逃げているとは言いませんが、関心がない、関心を失っているということを聞くと、私は「皆さんが払っているもんなんですよ。いいんですか、それで」ってそういうふうに聞きたくなるんですね。納税者の視点というのはとても大切です。だからといって税金を納めないということがいいこと、すなわち、節税対策を売り物にするというような職業が流行るのは、私はとても残念なことに思います。税金を払うということは、国民の義務であり、また栄誉であると私は思います。だからこそ、使い方に対して、私達は真剣な関心を払わなければならないということです。

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