長岡亮介のよもやま話111「大型連休」(4/29TALK)

 世間は、日本のこの春のいわゆる大型連休、あるいはゴールデンウイークと言われているものが、「10連休にもなる、これはすごいことだ」と、はしゃいでいますけれども、実は前にもお話したように、海外では10連休などというのはごく当たり前のことでありまして、そんなものを国民が一斉に取るというのではなくて、自分たちの好きなようにして取ることができる。豊かな老後を過ごすということが、いかに国民にとって重要視されているかっていうことは、現在のフランスのストライキが、私達に示してくれていますが、働くときは一生懸命働く。その代わりに、休ませてもらうときはたっぷり休ませてもらう。これが日本以外の国では常識であるんだと思います。私も全ての国を知ってるわけではありませんが、アメリカや西欧といういう国々はそうであるわけです。

 なんで国民が一斉に休暇を取らなければいけないのでしょうか。国民が一斉に休暇を取ったら、それによって観光地は喜ぶかもしれない、旅行業者は喜ぶかもしれない。一気にそこに収入が発生しますから。しかし、収入がそこで集中するということは、他の時が閑散期であるということを意味するわけで、決して年間を通して考えると、それがいいことなのかどうか疑問だというふうに考える方が普通だと思うのですが、お客さんがたくさん来てくれて嬉しいという反応にマスコミも集中してしまう。これは私達がどうも世界の常識とかけ離れたものを、常識としているからではないか。

 かつて私達は大本営発表という、軍隊の最上部の情報発信、言ってみれば虚偽情報の発信、大嘘情報発信。それを国民自ら鵜呑みにして、決して強制され、洗脳されたというふうに思っている人が多くいたわけではなく、ほとんどの人が自ら進んでその情報を受け入れていた。そういう国民性がこんにちにまで続いているという現実を見て、私は逆に、この現実から戦前の日本人の持っていた体質を、私達が今から見てクレイジーだというふうに断罪することはできない、と考えているわけです。私達は依然として、戦前の田舎者と同じように生きていくということです。私たちの中に何か「大本営発表のようなものに従って生きることが良いことである。自分にとって都合の良いことである。一言でいえば、権力にすり寄って迎合して生きる」、そのことが唯一の自分の生きる道だと思い込んでるところがいまだにあるというのは、戦後77年も経って、私達は反省しなければいけないんではないか。私達一人一人もっと自分自身できちっと論理的に考えるという習慣を、身につけるべきではないか。そういうふうに思います。もちろん、反対する意見はありますね。「そんなこと言ったって、日本の会社は休ませてもらえませんよ。」日本の会社というのは確かに一斉に休むとか、それこそ学校でありませんが、始業式とか終業式とかそれに相当するものが、官庁でさえ仕事始めとか仕事納めをやっていますね。本当に不思議なことですが、そういう行事が大好きな国民性です。そのような制度の中で、会社にも社員一斉に休むとか一斉に働くという体質が、色濃く残ってるっていうのは事実です。

 でも、そのことが嫌だと言うならば、思い切ってが会社に転職したらどうなんでしょうか。外資系に行けば、いくらでもそのような自由が利くはずです。外資系といっても外資系が日本に設立した日本法人は、「日本式の雇用システム、あるいは勤労システムを強制する。そういう体質があるんだ」とおっしゃる方がいらっしゃると思います。おっしゃる通りだと思います。しかし、それが嫌だったら、自分で起業するという手もあるわけですね。起業するということは、何かとんでもない人、とてつもない人、それだけがやるっていうふうに思ってるでしょうけれども、アメリカなんかでは、一流大学の最も上位層、成績の良い人たちというのは、大学に最近残らずに自分で会社を立てるという人がすごく多いんですね。いわゆる一流企業、大企業に就職するっていうのは、2番手3番手にいる人々である。日本も少しそういう方向に進んでほしいと願っていますが、日本では何か実力もないのに野心だけ大きいという人たちが起業しているようで、起業家の多くが大きなお金を集めることには成功していても、その事業そのものでは失敗を繰り返してるという話をよく聞きます。日本の起業家の中で成功しているのは、大体海外の企業の日本ブランチ、あるいは海外で成功した商品の日本版を作っている会社である。そういうことを私はよく耳にいたしますが残念に思います。

 この大型連休のときに、ラッシュアワーのような高速道路、あるいは新幹線に苦しめられたら、実は自分が苦しめられているのは人のせいではなく、「自分が自らそのような苦しみを作り出してる。その苦しみを、自分の連休というありがたいチャンスとして、お上から賜ったものだと思っている自分がいる」ということに、気づいてほしいのです。

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